成長期の子どもに多いけがは、ちょっとした習慣で減らせます。理学療法士の視点から、練習前後に取り入れたいケアを紹介します。
練習前は「動きながら」温める
練習前は、止まって伸ばす静的ストレッチより、体を動かしながら関節や筋肉を温める“動的ストレッチ”が向いています。その場ジャンプ、もも上げ、肩回しなどで体にスイッチを入れましょう。
練習後は「ゆっくり」伸ばす
運動後は、使った筋肉をゆっくり伸ばしてクールダウン。疲労の回復を助け、翌日に残りにくくします。お風呂上がりの数分でも効果的です。
睡眠と栄養も“ケア”のうち
ストレッチと同じくらい大切なのが、十分な睡眠とバランスのよい食事。体が育つのは休んでいる間です。練習・休養・栄養の3つをセットで考えましょう。
水分補給と「がんばりすぎ」のサイン
練習中は、のどが渇く前にこまめな水分補給を。また「疲れていてもやめたがらない」「痛みを隠す」子も少なくありません。表情や動きの小さな変化に気づけるのは、いちばん近くで見ている家族です。
休むことも練習のうち
同じ部位を使い続けると、成長期の体には負担が積み重なります。週に1日は体を休める日をつくるなど、“あえて休む”ことも上達の一部。痛みが続くときは無理をせず、専門家に相談しましょう。
成長期に多いけがを知っておく
子どもの体は、骨の端にやわらかい「成長軟骨」が残っており、大人とはけがの傾向が異なります。ひざの下が痛むオスグッド病、投球による野球肘、かかとの痛み(シーバー病)などは、成長期に多い代表例。いずれも“使いすぎ”が背景にあることが多く、早めの対応がカギになります。
動的ストレッチ・静的ストレッチの使い分け
- 練習前(動的)──もも上げ、その場ジャンプ、肩・股関節回しなど、動かしながら温める。
- 練習後(静的)──使った筋肉を20〜30秒かけてゆっくり伸ばし、呼吸を止めない。
順番を逆にすると効果が出にくいので、「前は動かす・後は伸ばす」と覚えておきましょう。
なぜ「前は動かす」なのか──研究で分かっていること
じつはこの使い分けは、感覚ではなく研究に基づいています。ストレッチ研究のシステマティックレビュー(Behmらの一連の報告など)では、運動直前に1か所を長く(目安として60秒以上)静的に伸ばすと、直後の筋力やジャンプ力が一時的にわずかに下がる可能性が示されています。一方、動的ストレッチは体温と神経の働きを高め、その後のパフォーマンスに良い影響が期待できます。つまり「練習前の長い静止ストレッチ」は昔ながらの習慣であって、今の標準は前=動的、後=静的。柔軟性そのものを高めたい静的ストレッチは、練習後やお風呂上がりに回すのが理にかなっています。
準備運動プログラムの効果は数字で示されている
「準備運動でけがが減る」ことも、国際的な研究で確認されています。代表例がFIFAの開発した準備運動プログラム「11+」で、ランニング・体幹・バランス・ジャンプ動作を組み合わせた約20分のメニューを続けたチームでは、下肢のけがが有意に減少したことが複数の国の検証で報告されています。家庭やクラブでそのまま再現する必要はありませんが、「準備運動はけが予防の実証された手段」と知っておくと、ウォームアップを大切にする姿勢が変わるはずです。
痛みのサインを見逃さない
「動き始めだけ痛い」「特定の動作で痛い」「片側だけ痛い」は、成長期に注意したいサインです。痛みを我慢して続けると、回復に時間がかかることも。2〜3日たっても痛みが引かないときは、無理をせず医療機関や専門家に相談してください。
- Behm らによる運動前ストレッチの急性効果に関するシステマティックレビュー
- FIFA「11+」傷害予防プログラムの効果検証研究(複数国のRCT)
- 日本臨床スポーツ医学会 成長期スポーツ障害に関する提言